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珠玉の名曲たち、クラシック音楽を楽しむブログ。クラシック音楽の楽曲をテーマに、短いエッセーを書いています。

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ストラヴィンスキー 「ペトルーシュカ」からの3楽章:ストラヴィンスキーとルービンシュタイン

Stravinsky, Prokofiev, Webern, etc / Maurizio PolliniStravinsky, Prokofiev, Webern, etc / Maurizio Pollini
(1996/02/13)
Pierre Boulez、

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ストラヴィンスキー 「ペトルーシュカ」からの3楽章

バレエ音楽「ペトルーシュカ」を、ストラヴィンスキー自身がピアノ版に編曲したものだ。
『のだめカンタービレ』で取り上げられて知名度もぐんと上がったが、それ以前から「超難曲」として名高い作品である。
ルーピンシュタインの委嘱でピアノアレンジがなされたのだが、その際ルービンシュタインはストラヴィンスキーに「過去のどの曲よりも難しくしてくれ」と頼んだらしい。
その結果、とんでもなく難しい曲が出来上がってしまった。
ルービンシュタインは、この曲の完成した1921年の3年後、1924年から演奏会に取り入れ、それ以降幾度となく演奏するのだが、技術・体力が衰えを見せた晩年はこの曲を弾くことはなかった。ストラヴィンスキーの要求もあって録音もしなかった。
その後この曲は、ポリーニの録音で一躍注目を浴び、ピアニストたちが一斉に取り上げるようになるのだが、一流と言われるピアニストたちの演奏でさえ、やはり完全に弾けているとは言い難いものがたくさんある。
ホロヴィッツも録音を嫌がったというし(と言いつつ爆速演奏を残しているのはさすが!)、ギレリスもそうだ(こちらは結構端折ったりカットしてる)。最近のではキーシンの録音も、まあ悪くはないのだけど、3楽章でちょっと力尽きている感がある。
まあ現代ではこれを弾きこなすピアニストもいることはいるのだろうが、テクニック云々という問題ではないように思う。
第1楽章 第1場より「ロシアの踊り」、第2楽章 第2場より「ペトルーシュカの部屋」、第3楽章 第3場より「謝肉祭」
という構成で、全部聴かせどころで難所だが、メインは3楽章である。

ストラヴィンスキーはこの曲をルービンシュタインに渡したとき、バレエ用のオケスコを書いたときの2倍近い報酬をもらっているし、実際ルービンシュタインはつとめてストラヴィンスキーの曲を演奏会で弾いて、印税がストラヴィンスキーに入るよう心配りをしていたらしい。
それほど懇意な仲でも、同じく彼に献呈した「ピアノ・ラグ・ミュージック」は、あまりにピアノが打楽器的過ぎてルービンシュタインは弾くのを拒んだという。
ストラヴィンスキーの打楽器的なピアノの使用は、その後の作曲家たちへの影響を考えても非常に大きな意義のあるものだったに違いないが、彼のピアノ曲が全てそうかといったらそうでもない。むしろ前衛的で技巧的なものはそれとペトルーシュカくらいなものだ。
ペトルーシュカでさえ、ストラヴィンスキーは「ピアノでオーケストラの再現を!」と望んでいた。
だが今ではほとんどピアニストの「技巧」を魅せる曲になってしまった。というよりむしろ、その超絶過ぎる「技巧」が彼の望みを叶わぬものにしてしまったと言える。
ピアノは打楽器的なもので、ピアノが歌うなどというのは幻想にすぎないと思っていたストラヴィンスキーに、ルービンシュタインは「ペトルーシュカ」の一部を弾いて、「これが打楽器のように聞こえるか?」と尋ねたところ、「あなたは何か特別なペダルの使い方をしているのですか?」と聞き返された、というエピソードがある。
これはルービンシュタインの語ったものなので、彼なりの冗談も含まれているかもしてないが、いかに技巧的なピアノでも、ルービンシュタインは「ピアノは歌う」ということを確信していたのだろう。
「ペトルーシュカ」ほどに難しい曲は「ピアノが歌う」ような録音は少ない。
しかし、ルービンシュタインの望みも、ストラヴィンスキーの望みも、超絶技巧を披露する演奏ではなく、「心を与えられた藁人形」のペトルーシュカを表現することだったのだろう。

ペトルーシュカは、藁人形の分際でバレリーナに恋をして告白するも、恋敵のムーア人に殺されてしまう物語だ。
「美しい若い女性にプロポーズするのは、『ペトルーシュカ』をピアノで演奏するよりも、ちょっと勇気が必要だ」とルービンシュタインは語っている。
まったく、上手いことを言うものだ。

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