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珠玉の名曲たち、クラシック音楽を楽しむブログ。クラシック音楽の楽曲をテーマに、短いエッセーを書いています。

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ミュラー 「アイガー」交響的スケッチ:新・アルペンシンフォニー

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ミュラー 「アイガー」交響的スケッチ

現代の作曲家もたまには紹介しよう。それこそ、知られざる現代音楽作曲家は星の数ほどいるが、特にまだ現役で活躍している作曲家については、かなり的を絞って紹介しないといけないと思っている。
ではどういう基準で選ぶかというと、一言で言えばちょっと保守的で僕のお気に入りかどうかなのだが、もう少し具体的に言えば「伝統的な手法に対するアンチ・テーゼとしての音楽ではなく、西洋音楽の伝統を意識した音楽であること」となるのだろうか。
マルセル・デュシャンやジョン・ケージのような現代芸術が(彼らももはや現代芸術と呼ぶのも苦しい古典となったが)、今までの芸術でなかったものを新しく芸術として領域を広げた。
僕はそうして芸術の領域を広げることそのものがおかしいとは思わないが、広げること自体に面白可笑しく目を向けているような音楽や、どうしてもそこに真の美が見い出せないようなものは、僕もベートーヴェンやモーツァルトと並べて紹介するのはちょっと心苦しい。
そこで、今回取り上げる、1964年に生まれたスイスの作曲家ファビアン・ミュラーは語る。「私たちの世代は、前衛も既にやり尽くされたと思っています。やはりヴァイオリンは美しい旋律を奏でるために存在しているのです」なんといい言葉だろう。こういう現代の作曲家も沢山いるので、まだまだ将来に希望をもって良いのだと思う。
ミュラーはチューリッヒのコンセルヴァトワールで学び、今ではスイスを代表する作曲家として活動している。管弦楽から室内楽、合唱、舞台音楽まで幅広く手がける作曲家だ。
今回紹介する作品の名前にある「アイガー」とは、ミュラーの故郷スイスを代表する山であり、ユングフラウ、メンヒと並び、オーバーランド三山の一つ。登るのが困難なことで知られ、多くの死者が出ている。
ミュラーは少年時代に、アイガーの麓グリンデルヴァルトで休暇を過ごした。そのときの印象が影響している作品である。
ちょうどリヒャルト・シュトラウスが、少年時代にドイツ・アルプスのツークシュピッツェを登山したときの体験がもとになって、アルプス交響曲を作曲した経緯と同じだ。
日本で言えば、富士山が多くの画家に創造力沸かせるように、アルプスは多くの音楽家にクリエイティビティを持たせるのだろう。

印象的なヴィブラフォンの音から始まる。RVWの南極交響曲なんかでもそうだが、氷河にはやはり鍵盤打楽器が相応しい。するとすぐに、一瞬だけ美しいアイガーの全景が見えるようだ。強さと恐ろしさを含んだ姿の、凛々しい美しさ。しかし、それもほんのひとときだけ。
ピッケルで氷壁を打つ音や、喘ぐような鳥の鳴き声のような音も聞こえる。天候も、霧や吹雪など、想像を掻き立てるような明確な変化が見られる。こうしたわかりやすい音楽描写を聞き取る楽しみはアルプス交響曲と共通している。
この曲で強調されているのは、人間に、悲劇的で絶望的な強大さを感じさせる存在であろう。力強い弦楽器の旋律を聞くと、これがアイガーのノースフェイスの有様なのか、とちょっと戦慄が走る。
渦巻く弦楽器と、咆哮する金管楽器、そこにすっと浮き出てくる木管楽器と打楽器、全体的に厚みがあるが、巧みなオーケストレーションである。
曲の終わりも意味深である。終盤には何か明るい景色のようなものが見えたような気がするが、最後の最後には不気味に風が吹き荒び、音楽の終わりが何か別のひとつのものの終わりを象徴しているかのようだ。
ミュラー自身はこの曲に対する回想として、次のように述べている。「私があまたの音符を紙に書いている幾年月もの間、私を見下ろしていたのはアイガーそれ自体だろうか? また、この高嶺を音楽に持ち込もうという試みを冒すことは単なる魅惑なのだろうか? もしかするとそれもまた、ノースフェイス(北壁)の歴史――幸福と悲劇が余りにも近く結びついている世界の歴史について読み解くことなのかもしれない」
なるほど、最高峰の山の登山とは、幸福と悲劇が表裏一体、むしろ辛く苦しく恐ろしい時間が大半を占め、そんな中で一瞬だけ、登らなかった者には決して体験することのできない幸福が訪れるのだろう。15分ほどの長さの中でアルプスの真髄を巧みに描く、新しいアルペンシンフォニーだ。

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