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珠玉の名曲たち、クラシック音楽を楽しむブログ。クラシック音楽の楽曲をテーマに、短いエッセーを書いています。

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殷承宗ほか ピアノ協奏曲「黄河」:プロパガンダから芸術へ

Yellow River ConcertoYellow River Concerto
(1999/09/21)
Cheng-Zong Yin、 他

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殷承宗ほか ピアノ協奏曲「黄河」

作曲者名や曲名から判る通り、これは中国のクラシック音楽作品である。東洋の国であるという点に加えて社会主義の影響もあり、ソ連や日本以上にいわゆる西洋音楽からは遠い国であった中国において、最も有名なクラシック作品がこのピアノ協奏曲「黄河」なのではないだろうか。
この曲の原曲となったのが1941年に冼星海が作曲したカンタータ「黄河大合唱」。中国人の友人にこの曲について聞いてみたら、皆知っているが、文化大革命のような気概を想起させるので、そんなに大声で褒めるようなものじゃない、と語っていた。
このカンタータは愛国的な作品であり、愛国的ということは、それがどういうものか言わなくても、ほとんどの日本人は理解できるだろう。つまり、中国の長い長い歴史と栄華の賞賛、残虐行為によって多くの人が苦しみを負った(とされる)、日本の侵略行為に対する中国の戦い、中国人の不屈の精神、そういったものが描かれている作品である。
こうした社会主義リアリズムの象徴のようなカンタータは、中国国内では重要とされていても、やはりプロパガンダ的な意味合いの方が強く、クラシックの世界では特に注目すべき音楽とはされていなかった。むしろ世界的に、芸術として高く評価されているのは、このカンタータを元に作られたピアノ協奏曲「黄河」の方である。
僕には、この事実は非常に興味深く思われる。いかにそれが一部の集団から敬愛されようとも、思想そのものが前面にいるような音楽よりも、思想が音楽という芸術に昇華したもの、音楽という形で芸術になったものの方が、人の心に響くのは当然なのだ。
ピアノ協奏曲「黄河」は、この「中国的な愛国思想」ゴリ押しの長大なカンタータを、ピアニスト殷承宗ら中国の音楽家たちが協力して、比較的聴きやすいクラシックの音楽作品にしようとしたものである。
その裏にあった動きは文化大革命であり、結局この作品もプロパガンダで社会主義リアリズムの作品であることには違いないのだが、音楽の「表現」という点では明らかに違う。1969年に完成したピアノ協奏曲「黄河」は、政治的背景はあるにしろ、原曲からはかなり政治色が薄くなり、芸術的には濃くなった名曲であろう。録音もたくさんあり、特に人気の高い中国ピアニスト、ラン・ランが弾いているものがドイツ・グラモフォンという大手から出たため、知名度もぐんと上がった。北京オリンピックの開会式での演奏も記憶に新しい。

さて、僕は「川の音楽」が好きだとここで何度か表明してきたが、これも川の音楽である。結果、この曲も好きということになる。本当は川の流れる悠々とした様の表現が美しくて好きなのだが、この曲はそういう雰囲気ではない。文化大革命が背景にあるため、進め進めの明るい雰囲気。
各楽章には副題があり、第1楽章「序曲・黄河の舟歌」、第2楽章「黄河を頌える」、第3楽章「黄河の怒り」、第4楽章「黄河を護れ」。副題はカンタータから取っていて、カンタータほど副題と内容が直結してはいないが、それでも音楽は副題そのまんまという感じでわかりやすい。
ファンファーレから1楽章が始まり、ピアノとオーケストラは、派手に華やかにかけあいを見せる。2楽章はいくぶん抒情的で、中国の国歌も用いられる。3楽章は「怒り」という題名ほど怒ってはいない。ピアノは多少怒っているようにも聞こえる。この楽章で注目したいのは、竹笛が入ることだ。これはいかにも中国風。
4楽章が白眉。勢いのあるピアノとオーケストラ。まるでショスタコーヴィチを思わせる。ジャズ組曲第2番のようだ。音楽から伝わる社会主義を賛美する空気。時代錯誤かもしれないが、クラシックとはそういうものだ。
とにかく、ピアノが技巧的で華やか。同じ東洋でも、日本文化は侘び寂びが要だが、大陸や半島の文化は、豪華絢爛さやキッチュさが特徴的とも言える。まさしくその行き過ぎたような華やかさは、西洋音楽の歴史の中では、ある意味新しい。
そして、ソビエトの巨匠作曲家たちを模したような、音楽が行進する力、その楽しさ!
ちょうど隣国との関係が不安定な時期だが、音楽に罪はないというのは、一応僕がこのブログでもたまに語っている持論である。戦争、軍隊、人種差別など、様々な問題と音楽は密接に結びついてきたが、真の音楽の美しさを前にしたら、人はどうこう言うことなどできない。こうした音楽の中にある美を、人間はきちんと見出していくべきなのだと思う。
人間たちのやり取りが問題となっていても、黄河はただ流れているだけで、罪はない。音楽もまた、恣意的に用いられたとしても、そこに美がある限り、それを見るということ――それが最も大切で、最も幸福な音楽への態度であり、そうした態度でこのピアノ協奏曲「黄河」を聴きたいものだ。それは本当に、楽しい時間である。

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